マルドゥック・スクランブル スペシャル
 

「マルドゥック・スクランブル 圧縮」記者発表会レポート (2010.8.11)


今秋の劇場公開へ向けて期待が高まる大作アニメ「マルドゥック・スクランブル 圧縮」。
3月に開催された東京国際アニメフェアでの製作発表会以来、なかなか明らかにならなかった新情報がついに解禁されたことを受けての記者発表会が8月11日に都内で行われた。登壇したのは、原作・脚本の冲方丁、工藤進監督、ルーン=バロット役・林原めぐみ、ディムズデイル=ボイルド役の磯部勉、音楽を担当するConisch(コーニッシュ)の5名。荘口彰久アナウンサーの司会のもと、会見はトークショー形式で進行していった。

今回公開された新情報の中でも目玉だったのは、先行して発表されていた林原めぐみ以外のキャストについて。
バロットの相棒であるネズミ・ウフコック=ペンティーノ役に俳優の八嶋智人を起用したほか、高い実力を持った声優陣が結集したキャスティングは、冲方・工藤の両名が膨大なボイスサンプルを聴きこんで決めていったとのこと。
その中でも特に、バロットの宿敵となるボイルドの配役は難航したそうだが、かつて磯部と共演した経験があるという林原が「磯部さんが一声発したときに、『殺されるかも?』という非常に怖い思いをしたんです。その印象が残っていて、『すごく怖い人がいるんだけど……』とキングレコードのスタッフに言ったところ、『実は昨日、磯部さんの名前が挙がっていたんですよ』と言われました」という秘話を明かしてくれた。
アフレコは既に終了しているとのことで、「磯部さんは『おはようございます』の挨拶からやっぱり怖くて……。お優しいんですけど、声が怖いんですよ(笑)」と、収録現場でのエピソードも披露。
ちなみに磯部自身はオファーがあった際、マネージャーから悪役だと聞かされて「ああ、やっぱりな」と思ったとか。
ボイルド役を演じるにあたって「想像を絶するワルなので、最初はどう演じていいか見当もつきませんでした。林原さんや八嶋さんのお芝居からヒントをいただくことも多くて、今回は救われた現場だったかなと思います」と感想を語っていた。

なお、バロットは声帯を失っており、機械を通して自分の声を再生して意思を伝えるという設定になっている。この「声ではない声」を再現するべく、林原は生まれて初めてマイクを3つ付けてアフレコに臨んだそうだ。のどには小さな骨伝導マイクを付けたとのことで、「彼女にとって苦である、スムーズではない感じを味わえたことがよかった。トイレに行くのが大変でしたけど(笑)」と、収録の様子を振り返っていた。
また、都合により当日欠席となった八嶋智人からは「落ち着いた、理知的な、紳士のようなネズミを意識してウフコックを演じました。三部作の第一弾ということで、これから何かが起こるぞ!という伏線が盛りだくさんです。一秒たりとも見逃すな!」というメッセージが紹介され、作品にかける意気込みが十分に伝わってきた。

キャスト陣の熱演とともに注目されるのがビジュアル面での完成度だ。
原作者であり脚本も担当する冲方は、アニメにおける表現の限界を考慮したプロットを制作現場に提出したところ、逆に「原作と違うじゃないですか?」と言われてしまい書き直しをしたのだとか。「まっすぐ壁を越えるということをありとあらゆる方向から試みている作品です。最初に映像を見て『このまま最後までいったら、この人たち死んじゃうんじゃないか?』と心配になるくらい、エネルギーの高さを実感しました」と、圧倒的なクオリティーの高さを絶賛した。
この時点での制作状況は、工藤監督によると99%出来ているとのことで、「今までアニメではそう見たことのないような映像を作ったと思っています」と、自信のほどをうかがわせた。

さらに人々を驚かせた新情報といえば、主題歌が本田美奈子の歌う名曲「アメイジング・グレイス」に決定したこと。
これは故・本田美奈子.が遺した歌声に、新たにアレンジされた楽曲を付けて「マルドゥック・スクランブル」版「アメイジング・グレイス for Balot」としてよみがえらせたもので、そのアレンジを担当したConisch(コーニッシュ)は「本田さんの歌が持っていたイメージが“希望の歌”だったので、それを作品の世界に寄せていく作業は楽しかったです」とコメント。
偶然にも、劇場公開日である11月6日は本田美奈子.の命日でもあり、「最初にそのことを聞いて、ご縁を感じました。曲を決めるのにもスタッフの方は悩まれていたんですけど、悩まれた分こういう結果になるんだなと感動しました」と、冲方も感慨深そうにしていた。

約1時間に渡った会見は、Conischによる劇中音楽の生演奏に合わせて特報映像が上映されるという、実に贅沢な趣向をもって終了となった。
10月上旬からは劇場窓口にて特典(イメージボード集)付き前売り券が発売開始予定。
そのほか、今後も最新情報を公式ホームページにてお伝えしていくので、欠かさずにチェックしてほしい。