東京国際アニメフェア2010『マルドゥック・スクランブル』製作発表会 (2010.3.27) 劇場アニメ化が伝えられていた『マルドゥック・スクランブル』の製作発表会が、3月27日、東京国際アニメフェア2010内のステージイベントにて開催された。 この日の発表会では事前に観覧募集が行われていたが、会場となったステージⅡの入場口は開場を待ちきれないファンで長蛇の列。 入場後は参加者全員に配られた無料小冊子『The world of TOW UBUKATA』を片手に、発表会の開催を今か今かと待ち構えていた。 なお配布された小冊子は『マルドゥック・スクランブル』を始め、漫画版『マルドゥック・スクランブル』『シュピーゲルシリーズ』など、六社七部門にて展開されている冲方コンテンツの内容が簡潔にまとめられたもの。 『マルドゥック・スクランブル』劇場版告知に際して、コンテンツの窓口になるものとして制作された。 製作発表会では原作者で脚本を担当する冲方丁、ヒロイン・ルーン=バロット役の林原めぐみ、音楽を手がけるConisch(コーニッシュ)が出席。 この日解禁されたPV映像ではバロットを始め、禁じられた技術で開発された金色のネズミ・ウフコック=ペンティーノや、バロットの命を狙うディムズデイル=ボイルドらが驚くべきハイクオリティーで登場。 細部まで描かれたバロットの透きとおるような肢体や、映像化困難と思われていた衝撃的なキャラクターが原作どおりに映し出されるごとに観客たちは大きく息を呑んだ。 PVの感想を求められた冲方は「とにかくウフコックがかわいい」と絶賛。 Conisch(コーニッシュ)は「アニメの動きと曲が合っていてよかった。作曲もこれからなので、さらにイメージが膨らんできました」と述べた。 林原は、呼吸音や心臓の音まで聞こえてきそうな完成度の高さに「声を入れるのがいやになっちゃうくらい(笑)」と率直な心境をもらした。 だが「アフレコのときまでには、バロットの声を温めて生きたい」と、その意欲を語った。 また冲方は「アニメスタッフに、これは難しいと思ってぼかした内容のプロットを提出したら、原作と違うとリテイクを出された」というエピソードを披露。 何があっても逃げないと作品をリスペクトしてくれるスタッフによる映像化に、冲方も10年前の自分をリスぺクトしていきたいと決意を新たにしていた。 同作は5年前に映像化の企画が持ち上がったが、さまざまな事情で頓挫したという経緯がある。 そのときもバロット役として決定していた林原は「資料や原作を読んでいたら、バロットに呼ばれたと思った。ところがある日、中止のFAXが冷たく送られてきて…。」と当時の悲しみを語り、思い余って早川書店に冲方宛ての熱烈な手紙を送ったエピソードを披露。 冲方は「誤字脱字もいっぱいだった(笑)」と林原を慌てさせながらせも「作者として伝えたいことが本当によくわかっていてすごいと思った。林原さんの手紙を読んで、逆に映像化できると確信した」と、当時の心境を明かした。 ところが今回で二度目となるバロット役のオファーに、林原は最初、真正面からお断りしたという。 「もう5年も経っているし、自分が今までに演じてきたキャラクターのイメージが、ファンの中にあるかもしれない。そのキャラクターたちが、バロットの邪魔をしてはいけない」と、その理由を語る林原。 だが再度オファーを受けた時は「バロットに呼ばれた。彼女も肉声を発して欲しかった」と思い直し、今回の出演はまさに『縁』だったと語った。 一方、冲方と林原の秘められたエピソードに聞き入っていたConisch(コーニッシュ)は、音楽もバロットの人生に思いをはせながら作りたいと発言。 「悲惨な人生だけを表現するのではなく、彼女が未知の世界へと足を踏み入れるワクワクやドキドキを表現したい」と意気込みを語った。 現時点では、林原以外のキャスティングは未定。冲方は「50人以上のサンプルが入ったCDを片っ端から聞いている」と状況を語った。製作も「ものすごく順調」とのこと。 ただし、作品に対する妥協は一切ない。その一例がさまざまな試行錯誤によって、色や髪型の細部にまでこだわったキャラクター設定。原作では短髪だったボイルドがPV映像では長髪で登場するのも、逆さの世界を歩いた時に上下逆だと髪の毛で分かるようにと配慮した結果とのこと。 最後に、発表会に集まったファンに対して、各出演者からメッセージが寄せられた。 Conisch(コーニッシュ) 「映画が公開される前に、私の曲で作品のイメージを膨らませていただけたらと思います。みなさんの中で、いろいろなシーンを想像してください」 林原 「5年前に出会ったとはいえ、私にとって久々の新キャラクターです。全力でバロットと向き合いたいと思います」 冲方 「一スタッフとして、本当に全力を尽くして制作しています。ここからがスタートとなりますので、この大きなプロジェクトをぜひ、楽しみにしてください。よろしくお願いいたします」 この挨拶で発表会が締めくくられるかと思ったが、なんとここで、冒頭に公開されたものとは別バージョンのPVが公開。 新たな運命に立ち向かうバロットの活躍が、公開ギリギリの範囲で映し出され、最後までファンを飽きさせない驚きに満ちたイベントは幕を閉じた。
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